分科会について(9月18日(日))

午前(10:00~12:30)


第1分科会:大学図書館史 「大学図書館問題研究会の歴史を見るPart6」

 今回の大学図書館史分科会は、昨年に続き1970年に成立した大学図書館問題研究会の歴史を主題とする。今回は主に2001年から2010年までを取り上げる。電子ジャーナルの普及や情報リテラシー教育・機関リポジトリの展開など、当時の大図研と大学図書館界の歩みについて、当時の会報『大学の図書館』を主な史料として振り返ることとしたい。
 大学図書館史に関心を有する方やこれまでの歴史から現在を捉え直したい方などの参加を期待しており、大学図書館史を学び合う機会としたい。

担当:
加藤 晃一(千葉大学附属図書館)
小山 荘太郎(三重大学医学部図書館)


第2分科会:利用者支援 「医学 ・医療系図書館における利用者支援」

 この分科会では、主に医学・医療系の学部・学科を有する大学図書館における利用者サービスを中心に、その特徴や他館との違い、あるいは業務での心構えや知っておきたいポイントを中心に進行する。
 前半は、まず佐藤氏よりご自身の勤務経験を基に、医学・医療系図書館についての総論・また利用者マーケティングや図書館員としての自己研鑽などについてお話しいただく。また、実際の研究支援の事例として、川村氏より北海道大学附属図書館医系グループにおけるシステマティックレビュー作成支援についてお話しいただく。
 後半は、事前アンケートの回答を中心に、参加者が普段の業務で感じていることや他の人に聞いてみたいことについていくつかの話題を取り上げ、参加者間同士で討論を行う。
 この分科会は、 医学・医療系図書館に勤務する(あるいは今後勤務予定がある) 者でなくとも参加歓迎である。当分科会を通じて、利用者そして自身のヘルスリテラシーの向上のために何をすべきか、また「インフォプロ」として図書館員はどうあるべきかを考える機会としたい。

話題提供:
 佐藤 正惠氏 (千葉県済生会習志野病院図書室)
 川村 路代氏 (北海道大学附属図書館)

参考URL:
・佐藤正惠「信頼性の高い情報を「探して」「つなぐ」専門図書館と司書」週刊医学界新聞, 3080 (2014)
 https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/y2014/PA03080_04
・川村路代 「北海道大学におけるシステマティックレビュー支援 : 始まりとその先 (第15回学術情報ソリューションセミナー 2019 in SAPPORO )」
 https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/handle/2115/76425
・北海道大学附属図書館「文献検索相談・代行サービス【医系グループ】」
 https://www.lib.hokudai.ac.jp/med/search/
※いずれも2022.7.31 参照

担当:
下山 朋幸
河野 由香里(北海道大学附属図書館)


第3分科会:資料保存 「紙資料から電子資料への置き換えについて考える」

 資料を保存するなら紙媒体が一番安定しているだろう。しかし、インターネットでアクセスできる利便性や書架の狭隘化のため電子ジャーナルや電子ブックを契約したり、資料の劣化を考慮してデジタル化する動きも進んでいる。
 この分科会では、電子版やデジタル化された資料の紙版について情報交換をおこないたい。電子化されているからといって一律に除籍できるわけではない。紙版の一覧性と読みやすさは無視できない。なにより完全に電子化されていないこともある。
 同時に、電子版の長期的な保存についても考えたい。電子的な資料は、記録メディアの寿命やオンラインでいつまで入手できるのか、契約を中止した場合の影響などについて検討する必要がある。
 参加者からの事例紹介と意見交換を中心に、今後保存すべき資料について考え、情報を得られる場としたい。

分科会に参加される方へ!
以下のテーマについていずれかひとつ、事例紹介の準備をお願いします。
発表時間は5~10分。事前に希望確認のメールを送ります。
<テーマ>
1.電子ジャーナル・電子ブックが提供されている資料の、紙版について
2.電子的な資料の保存媒体(HDD、DVDディスクなど)について
3.電子ブックや電子ジャーナルの契約中止、提供中止について

<参考文献>
- 伊原尚子. 利用者行動の変化とILL : 浜松医科大学スマート・ライブラリ構想からの考察. 医学図書館. 2018, 65 (4), 229-234.
- 伊原尚子. 新たな大学図書館を模索して : 浜医スマート・ライブラリ構想. 2018-06-15
 http://hdl.handle.net/10271/3360
- 浅見沙矢香. 名古屋大学附属図書館医学部分館における外国雑誌の廃棄について. 医学図書館. 2013, 30(3), 313-317.
 http://hdl.handle.net/2237/19100
-電子情報の長期利用保証に関する調査研究(国立国会図書館)
 https://www.ndl.go.jp/jp/preservation/dlib/research.html, (参照2022-07-21)

担当:
楫 幸子(安田女子大学図書館)
和知 剛(郡山女子大学短期大学部)


第4分科会:キャリア形成 「管理職としてのキャリア」

 近年では、「ワークライフバランスを大切にしたい」、「責任の重い仕事をしたくない」といった理由で、管理職になりたくないと考える若者が増えているとも言われている。
 しかしながら、経験年数が長くなればリーダーとしての役割が求められるようになり、積極的に昇進を望まなくとも役職に就くこともある。管理職は、キャリア形成を考える上で、多くの人にとって避けては通れないものとなっている。
 この分科会では、現在管理職についている方々から、ご経験を元に管理職としてのやりがいや心構え等を伺う。身近な管理職以外の方と話すことは、現在の職場の状況を客観的に見るきっかけにもなるため、管理職を目指している方でなくとも気軽にご参加いただき、自身のキャリア形成を、役職面から考えるきっかけにして欲しい。
 今年も会報7月号の特集との連動企画になっているため、参加を検討される方は是非お読みいただきたい。

担当:
柿原 友紀(熊本大学)
中川 恵理子(金沢学院大学図書館)



午後(14:15~16:45)


第5分科会:学術情報基盤 「電子資料の利用者認証・認可」

 第5分科会では、電子資料の利用に関わる利用者の認証・認可をテーマとします。
 電子資料の提供にあたっては、その資料を利用することのできる利用者を特定し、その利用者に適切な利用権限を与える必要があります。しかし、これは決してかんたんなことではありません。
 電子資料の提供元は多様化しており、利用者一人一人にパスワードを配ればよい、というものではありません。かといって、利用者全員で共通のパスワードを使おうとすると、どうしてもパスワードの横流しによる不正利用の不安が出てきます。自分の大学のユーザ名とパスワードだけで、全国の大学や電子ジャーナルのサービスにログインできる「学認」を利用できる提供元も増えましたが、すべての電子資料の提供元が学認に対応しているわけではありませんし、そもそも学認の導入自体も図書館単独で行うのは至難の業です。かといって、大学キャンパス内での利用を前提とした、IPアドレスによるアクセス制御だけで済んでいた時代にはもう戻れないでしょう。
 この分科会では、各参加者からの事例報告や話題提供を通して、電子資料の認証・認可に関わる課題や悩みを共有し、運用の助けにつながる議論を行いたいと思います。

担当:
田辺 浩介(物質・材料研究機構)
上村 順一(国立情報学研究所)


第6分科会:図書館経営 「大学図書館経営危機をどう乗り越えるか~先進事例研究から学ぶ(公共図書館を中心に)」

 昨今、COVID-19の影響もあり大学を取り巻く環境は大きく変化し、想定していなかった課題を解決するために多くの経費とマンパワーを費やしている。
 大学図書館もますます厳しい状況に置かれ、さらに急激な円安進行が強烈なダメージを与えている。このような厳しい状況において、大学図書館として打てる手はないだろうか?
 地方自治体でも人口減・収入減の中で効率化が求められ、専任職員が減り図書費もままならない公共図書館が増加している。そうした中、工夫とアイデアで図書館の重要性をアピールし、危機を乗り越えようとする事例が注目を集めている。
 本分科会では、このような公共図書館の事例に詳しい常世田良先生を迎え、参加者による事前学習とディスカッションにより、危機を脱するアイデアや取り組みを検討する。当事者意識を持ち、積極的に討論に参加する方を歓迎する。

 なお本分科会では、以下の事前学習を課している(提出等不要)。
1.各自の図書館内で検討している「改革案」の内容を確認する
2.「改革案」を実現するために、自分の立場で何ができるか?してきたか?をまとめる
3.以下の指定文献に目を通す(原則として文献1.は必須とするが、それ以外のものは任意)

<指定文献>
1.『ネット時代の図書館戦略』 ジョン・ポールフリー 原書房 2016
  ※具体例もさることながら、取組の手法と意識の部分を読むこと
2.『未来をつくる図書館』 菅谷明子 岩波新書 2003
3.『図書館があなたの仕事をお手伝い』
  http://www.business-library.jp/2021/06/02/2021-06-02-jireisyu-2/ (紹介記事)
4.「図書館のミッションを考える」 片山善博 『情報の科学と技術』57巻4号 p.168-173 2007
5.映画「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」 フレデリック・ワイズマン監督 2019
 (2022.6.27現在 Amazon Prime Video において無料視聴可能)

担当:
井上 昌彦(関西学院大学図書館)
安東 正玄(立命館大学)


第7分科会:図書館建築・デザイン 「アクティブラーニングスペースの現状とこれからを考える」

 コロナ禍により、大学図書館の多くは、感染リスクへの懸念からアクティブラーニングスペースの利用停止に迫られた。その後、対面授業の再開も受け、感染症対策を施して利用を再開した館もあれば、個人閲覧席に用途を転換している館もあるなど、模索が続いている。
 本分科会では、現状をラーニングコモンズ等のアクティブラーニングスペースが果たしてきた役割をあらためて考える契機ととらえ、今後図書館施設に求められる機能やその活用という視点にも立ちながら議論する。国内のラーニングコモンズ導入時の議論への振り返りを含めた話題提供の後、ラーニングスペースについて参加者の所属館の状況を持ち寄りながら、ともに考えたい。

話題提供:土出郁子氏(大阪大学附属図書館)

担当:
赤澤 久弥(大阪大学附属図書館)
吉田 弥生(大阪大学附属図書館)


第8分科会:出版・流通 「学術情報流通の現状の改善に向けた大学図書館の対応を考える」

 昨年2月に発表された「我が国の学術情報流通における課題への対応について(審議まとめ)」(全20ページ)(参考文献1)では、ジャーナル購読価格上昇、APC負担増、研究成果発信力・研究者評価の在り方などに関する問題が取り上げられ、学術情報流通の現状の改善に向けた課題が示され、大学図書館を含む関係機関がこれら課題に取り組むことが要請されている。
 学術情報流通に関して、とくにジャーナル関連については、平素の図書館業務では、購読の維持という目の前の対応に翻弄され、「審議まとめ」で提示されているように広く課題をとらえる余裕がないのが現状かもしれない。
 「審議まとめ」には、学術情報流通が目指すこととして、研究成果を研究コミュニティ、社会に広く流通させ、更なる科学技術・学術の発展につなげることが挙げられている。これは、適切な学術情報へのナビゲートを役割とする大学図書館が関わる内容であると思われる。
 本分科会では、まず、「審議まとめ」にて提示されている各課題の内容を、関連事項を含めて確認することにより、学術情報流通の現状の問題点を全体的に把握し、更に、現状の改善のために大学図書館は何ができるかを、意見交換を通して考えることを予定している。

(参考文献)
1. 科学技術・学術審議会情報委員会ジャーナル問題検討部会. 我が国の学術情報流通における課題への対応について(審議まとめ)(令和3年2月12日)
2. 有田正規『学術出版の来た道(岩波科学ライブラリー 307)』岩波書店, 2021.

担当:
北川 正路(東京慈恵会医科大学 学術情報センター)