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「現場からの大学図書館づくりガイドライン」(1995年改訂版)

利用しやすく働きがいのある大学図書館の創造を求めて
1995.8 大学図書館問題研究会

Ⅰ.学生・教職員・社会に開かれた図書館サービスの向上に努めます。

1.求める資料や情報の確実かつ迅速な提供に心がけ、貸出をはじめとした利用の拡大に努めます。

2.教員との連携を強め、大学の教育・研究とかみ合った図書館サービスに努めます。

3.講義・ゼミに必要な基本的資料の整備に努めます。

4.開館時間・開館日は利用者の要望を考慮し、全学の合意を得て諸条件を整備して改善に努めます。

5.入館や貸出などの利用手続きの簡素化に努めます。

6.公平に利用されるように貸出冊数、貸出期間、書庫への入庫などの利用条件の整備に努めます。

7.図書館の使い方や情報の入手方法などのガイダンスやレファレンスサービスの充実に努めます。

8.情報メディアの多様化(視聴覚サービス、オンラインやCD-ROMによる検索)に対応した情報提供サービスの推進に努めます。

9.広報活動や文化事業などのサービスを積極的に展開するように努めます。

10.外国人留学生や図書館利用に障害のある利用者へのサービスにも配慮した運営に努めます。

11.公開講座受講生や学習意欲のある市民が利用できるように努めます。

12.資料提供の自由と個人情報の扱いに配慮した運営に努めます。

13.利用統計や利用者アンケートなどを図書館サービスの向上に役立てるように努めます。

Ⅱ.出版形態の変化に対応した資料の収集、受入、整理、保存体制の確立に努めます。

1.資料収集の方針、計画、選択基準を明らかにし、系統的に蔵書を充実するとともに、保存体制・廃棄基準も明らかにするように努めます。

2.利用者の要望、教育・研究・学習との関連を考慮した資料収集に努めるとともに、資料を利用するために必要な機器の整備にも努めます。

3.自館の特色を生かしたコレクションを形成するとともに、学問分野、地域、館種ごとに可能な分担収集に努め、そのために必要な人員を確保するように努めます。

4.交換や寄贈等により資料の収集に努めます。

5.収集・発注・受入・整理の処理を迅速に行うように努めます。

6.目録は様々な角度から検索できるようにするとともに広く公開できるように努めます。

7.資料費の十分な確保に努めます。

8.文化遺産としての資料を保存するため、資料特性を考慮した保存に努めます。

Ⅲ.図書館運営の民主化と図書館職員の専門制度確立に努めます。

1.利用者の要望に応える業務運営と専門的職業集団としての能力を高め、図書館の民主的運営に努めます。

2.図書館の運営を決定する機関に利用者や図書館職員の声が反映するよう努めます。

3.図書館の年間計画を作成し、必要な予算を確保するとともにその結果の評価・点検に努めます。

4.図書館職員の人事上の処遇に、職務の専門性が考慮されるように努めます。

5.図書館業務に必要な人員の確保に努めます。

6.非正規職員の待遇改善に努めます。

7.業務委託をできるだけ少なくするよう努めます。

8.図書館職員の専門制度を確立するため、学内の理解を得るとともに日本図書館協会を始めとした関係諸団体との協力に努めます。

9.「図書館員の倫理綱領」を大学図書館の現場に生かせるように努めます。

Ⅳ.利用しやすく働きやすい安全な図書館施設をめざします。

1.利用しやすい位置に図書館を設置するように努めます。

2.開架、収蔵、業務などの空間を十分確保するように努めます。

3.建物は可能な限り低層とし、主階を路面にあわせる等に配慮した設計に努めます。

4.適切なサイン計画を取り入れるように努めます。

5.教育、研究、学習、憩いに適した空間と快適な空調の確保に努めます。

6.ハンディキャップを持った利用者にも配慮した施設となるように努めます。

7.図書館建築の計画は全学の意見・要望が尊重されるとともに、図書館職員と建築家が協力してあたれるように努めます。

8.完成後の施設の機能を十分発揮するために必要な予算を確保するように努めます。

Ⅴ.図書館業務電算化(システム化)の民主的推進に努めます。

1.業務電算化に必要な措置は、図書館とシステムサイド、学内外の関連機関との連絡協力を密にし、円滑な推進に努めます。

2.図書館システムの開発は、情報技術の動向や学内の情報環境も視野に入れながら、業務管理と情報サービスのツールとして図書館員だけでなく利用者にも使いやすいものとなるように留意します。

3.個人情報の保護、データセキュリティに配慮したシステムの構築に努めます。

4.ディスプレイ障害やテクノストレスなどが生じないよう、職員の健康管理と職場環境の改善に努めます。

5.システムの運用に必要な職員への研修機会の平等な確保・充実に努めます。

Ⅵ.図書館間の相互協力強化とネットワークの健全な発展に努めます。

1.ネットワーク化や相互協力網の形成は、個々の大学図書館の充実や健全な発展を基礎に、その延長として調和の取れた整備が図られるように働きかけます。

2.学術情報センターが学術情報の流通を支える大学共同利用機関として発展するよう働きかけます。

3.各大学図書館が、それぞれの特色を生かしたコレクションを育てることができるよう、国の財政援助の大幅な増額と公正にして効果的な配分となるよう働きかけます。

4.国立大学外国雑誌センター館でのレアジャーナルの収集・提供は、本来必要とされるセンター館のコアジャーナル収集にしわ寄せが及ばないことに留意して充実されるように働きかけます。

5.各大学図書館の資料収蔵能力の限界を抜本的に解消するため、地域ごとに保存図書館を設置することを盛り込んだナショナルプランの早期実現に向けて働きかけます。

Ⅶ.日本国憲法を基本理念とし、開かれた大学づくりと図書館の自由の発展に努めます。

1.「図書館の自由に関する宣言」を日常の業務に根づかせるように努めます。

2.思想・表現の自由を擁護し、広く学術関係諸団体との協力・共同の関係を築くように努めます。

3.情報公開制度と個人情報保護の動きに注意を払い、図書館の自由との関連性を追求するように努めます。

4.複写、複製技術と著作権や知的所有権の動向に関心を寄せ、公正な解決がはかられるよう努めます。

5.非核平和、地球環境保全など時代が直面する課題に対して、大学図書館の情報発信機能強化に努めます。